恩師、稲垣稔先生が亡くなりました。
信じられない。
なんて言ったらいいのかわかりません。
思い出を語らせてください。
私が高校生だったころ、漠然とプロになりたいと思っていた私は、最高の先生に習いたいと思い、門を叩いたのが稲垣先生でした。
CDで聴いた美音は、生ではもっとすごかったです。
音量の豊かさにも圧倒されました。
そして、門下生はみんな仲が良く、全員のレッスンが終わるのを待って、毎回ご飯を食べにいきました。
高校生が夜遅くまで出歩くことを、親は心配しましたが、先生や先輩の一言一言が勉強だと思ってかじりつくように聞いていました。
そして、私が20歳のころ、私はフランスに留学することにしました。
先生と門下生のみなさんが、留学記念コンサートを企画してくださいました。
少しだけ先生と2重奏で共演していただいたのですが、圧倒的な存在感に飲まれっぱなしでした。
いつか、先生と対等に音楽で語りあえるぐらい弾けるようになりたいと、ずっと思ってきました。
またいつか、一緒に演奏して、上手くなったなって言ってもらえたら、とずっと思ってきました。
世界的奏者に向かって、図々しいのは承知の上です。
門下生というのは、そうやって先生の背中を追いかけるものですから、許してください。
結局、そのチャンスはないまま、この日を迎えてしまいました。
こんなに早いなんて。
あの世とか、そういうのはよくわかりませんが、先生に聴かれても恥ずかしくない演奏ができるよう、精進したいと思います。